一般建築物における石綿含有建材とは?

一般建築物に使用される建材には、過去に石綿(アスベスト)が含まれているものが多く存在しました。石綿は、その耐久性や断熱性、防音性などの優れた特性から、建築業界で広く使用されていました。しかし、石綿を吸い込むことで健康被害が生じる可能性があることが明らかになり、現在ではその使用が制限されています。

石綿含有建材の特徴と用途

石綿の特徴

石綿は非常に細い繊維状の鉱物で、以下のような特性を持っています。

  • 耐熱性:高温にも耐えられる。
  • 耐久性:長期間にわたり劣化しにくい。
  • 防音性:音を遮断する効果が高い。
  • 加工性:他の材料と混合しやすい。

石綿含有建材の使用例

建築物において、石綿は以下のような建材に使用されていました。

  • 吹き付け石綿:天井や壁面の断熱材や防音材として使用。
  • 石綿スレート:屋根材や外壁材として使用。
  • 石綿入りパイプ:水道管や排水管。
  • 石綿含有接着剤:タイルの接着や防水用。

これらの建材は1970年代から1990年代にかけて特に多く使われました。

石綿の危険性と健康被害

石綿そのものは固形状態では危険性が低いとされていますが、破壊や劣化によって繊維が空気中に飛散すると、吸い込んだ人の健康に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

主な健康被害

  • アスベスト肺(じん肺): 石綿繊維が肺に蓄積し、呼吸困難を引き起こします。
  • 肺がん: 長期間の曝露によりリスクが高まります。
  • 中皮腫: 肺や腹膜に発生するがんで、石綿との関連性が強いとされています。

石綿は少量でも健康に悪影響を及ぼす可能性があるため、適切な管理が必須です。

石綿含有建材の確認方法

建物の年代で判断する

石綿が使用されている可能性が高いのは、以下の期間に建築された建物です。

  • 1970年代~1990年代:石綿含有建材の使用がピークだった時期。
  • 2000年以降:規制により石綿使用が激減。

専門調査の必要性

建物の石綿使用の有無を確認するには、専門業者による調査が必要です。調査では、以下のような手順で進められます。

  1. 建材のサンプリング。
  2. 石綿含有率の分析。
  3. 結果報告と安全対策の提案。

石綿含有建材の適切な取り扱い

取り扱い時の注意点

石綿含有建材を取り扱う際は、以下のポイントに注意してください。

  • 破壊を避ける: 石綿繊維が飛散するリスクを減らすため、建材を壊さないようにする。
  • 防護具の着用: 作業者は防じんマスクや保護衣を着用する。
  • 飛散防止対策: 作業現場を封鎖し、飛散防止剤を使用する。

除去作業の手順

石綿含有建材の除去は、資格を持つ専門業者が行う必要があります。除去作業では以下の手順が一般的です。

  1. 作業区域の封じ込め。
  2. 飛散防止剤の散布。
  3. 石綿含有建材の慎重な取り外し。
  4. 廃棄物の適切な処理。

身近な石綿含有建材と注意点

石綿は、ネイルサロンやDIY用品など、意外な場所でも使用されていた可能性があります。例えば、旧式のタイル接着剤や一部の断熱材などが挙げられます。これらを扱う際にも、以下のような注意が必要です。

  • 古い材料は慎重に: 年代物の建材や用品は石綿を含む可能性があるため、むやみに削ったり壊したりしない。
  • 購入時に成分を確認: 現在販売されている製品は規制により安全ですが、念のため成分表示を確認しましょう。

石綿規制の現状と未来

日本では、2006年以降、石綿含有建材の使用が全面禁止されています。しかし、過去に建築された建物においては、いまだに石綿が残存している場合があります。これに対応するため、以下のような取り組みが進められています。

  • 建物調査の義務化: 老朽化建築物の解体前に、石綿の有無を確認することが義務付けられています。
  • 廃棄物処理の徹底: 石綿廃棄物は特別管理産業廃棄物として厳格に管理されます。

まとめ

石綿含有建材は、かつては便利な建材として広く利用されていましたが、その危険性が明らかになった現在、適切な管理と取り扱いが求められています。一般の方も、特に古い建物やDIY作業を行う際には注意を払い、必要に応じて専門家に相談しましょう。安全な環境を守るため、一人ひとりが正しい知識を持つことが重要です。

一般建築物石綿含有建材調査者講習について