高層ビルやマンションなどの建築物では、外壁の安全性を定期的に確認する必要があります。特にタイルの浮きや剥落といった劣化は、重大な事故につながる恐れがあるため、法令に基づく外壁点検が義務化されています。
このような背景から近年注目を集めているのが、「産業用ドローン」と「赤外線カメラ」を活用した外壁調査です。足場を設置せずに高所の外壁を安全・迅速に点検できる方法として、建物管理者や点検業者に広がりを見せています。
本記事では、建築基準法第12条に基づく外壁点検の内容と、産業用ドローンによる赤外線調査のメリット、安全対策、法的背景について詳しく解説します。
建築基準法第12条とは?
建築基準法第12条は、建築物の維持管理に関する定期調査・検査の実施を規定した条文です。中でも「定期報告制度」は、特定の建築物所有者が建築士など専門家による点検を定期的に実施し、その結果を特定行政庁に報告することを義務付けています。
対象となる建物の例:
- 高さ13m超の建築物(例:マンション、商業ビル)
- 地上5階以上の建築物
- 特定用途に供する建築物(病院、学校、集会所など)
これらの建物は、外壁仕上げ材(タイルなど)の全面打診またはこれに準じる調査方法による点検が必要とされており、表面的な目視だけでは不十分とされています。
なぜ赤外線+ドローンなのか?
従来の外壁調査では、仮設足場やゴンドラの設置が必要でした。これには高額な費用や長期間の工期、周辺環境への影響(騒音・振動・通行制限)といった問題が伴います。
これに対し、ドローンに赤外線カメラを搭載して上空から撮影する方法は、非接触・非破壊で、短時間かつ広範囲にわたる外壁調査が可能です。
赤外線調査のしくみ:
外壁タイルが浮いている箇所では、空気層が断熱材のような働きをするため、健全な部分と比べて表面温度が異なります。この温度差を赤外線カメラが検出し、タイル浮きや剥離の可能性がある箇所を可視化できます。
ドローン活用の利点:
- 高所作業の安全性向上
- 工期短縮とコスト削減
- 複雑な構造物やアクセス困難な箇所にも対応
法令に準拠した調査手法
建築基準法では「全面打診等」とされていますが、「等」には赤外線調査のような代替的な方法も含まれます。実際、国土交通省や自治体でも、赤外線+ドローンによる調査方法が一定の条件下で認められており、点検者が一級建築士や特定建築物調査員の資格を有すること、および適切な機材と手順による正確な診断ができることが求められます。
また、2022年の建築基準法改正により、全面打診に代わる合理的な点検方法の活用が正式に位置付けられたことで、ドローン調査は今後ますます普及が見込まれています。
点検結果の活用と修繕への流れ
ドローンによる赤外線撮影で得られたデータは、解析ソフトを用いて温度差や異常部位をマッピングし、報告書としてまとめられます。これにより、実際にタイルが浮いている可能性の高い箇所を絞り込み、修繕や補修計画の精度と効率を大幅に向上させることができます。
さらに、調査報告書は建築物の定期報告として提出するほか、施工会社や管理会社との工事見積もり・交渉時にも有効な資料となります。
調査を依頼する際のチェックポイント
外壁調査を外部業者に依頼する際は、以下のポイントを確認しましょう:
- 建築基準法第12条に基づいた調査実績があるか
- ドローン・赤外線カメラの機材スペックと解析体制
- 調査結果を建築士や特定建築物調査員が評価しているか
- 報告書の内容と提出先(特定行政庁)への対応経験
また、調査後の補修対応まで一貫して提案してくれる業者であれば、スムーズな維持管理が期待できます。
まとめ
産業用ドローンと赤外線技術を活用した外壁調査は、従来の打診調査に代わる合理的で安全な手段として、今後のスタンダードになりつつあります。法令に準拠した確実な点検を実施することで、建物利用者の安全を守ると同時に、不要なコストやトラブルを未然に防ぐことができます。
産業用ドローンを活用した外壁赤外線調査の詳細や導入事例を随時紹介しています。12条点検をご検討中の方は、ぜひご相談ください。