1. 石綿(アスベスト)とは?
石綿(アスベスト)は、耐熱性や耐久性に優れた鉱物繊維であり、過去には建築材料や工業製品に広く使用されていました。しかし、健康への影響が問題視され、現在では使用が禁止されています。
特に、日本では2006年以降、原則として石綿の使用が全面的に禁止されましたが、それ以前に建設された建築物や工作物には、いまだに石綿が含まれている可能性があります。
2. 石綿が使われていた可能性のある工作物
石綿はその特性から、多くの建築物や工作物に使用されていました。以下のような施設には、石綿含有建材が使われていた可能性があります。
2.1 煙突・ボイラー設備
煙突やボイラー周辺では、高温に耐えるための断熱材として石綿が多用されていました。特に、工場の煙突や大型のボイラー設備には注意が必要です。
2.2 橋梁(きょうりょう)
橋の耐久性を向上させるため、石綿が含まれた塗料やシーリング材が使用されていることがありました。補修や解体作業の際には、石綿の飛散防止策が重要です。
2.3 ダム・貯水池施設
ダムや貯水池の水漏れを防ぐための防水材として、石綿が使われていたケースがあります。老朽化した施設の点検や改修時には、石綿が露出する可能性があります。
2.4 トンネル・地下施設
トンネル内部や地下鉄の構造物では、耐火性や防音性を高める目的で石綿が含まれた建材が使われていた可能性があります。
2.5 住宅の屋根材や外壁材
特に1980年代以前に建てられた住宅では、スレート屋根材や外壁材に石綿が含まれていることがあります。リフォームや解体時には、慎重に対応する必要があります。
3. 知らずに石綿を触ってしまったらどうする?
石綿は目に見えない繊維状の物質であり、飛散した場合に吸入することで健康被害を引き起こす可能性があります。もし知らずに石綿を触ってしまった場合は、以下の対応を速やかに行いましょう。
3.1 服を着替える
衣服に石綿の粉じんが付着している可能性があるため、すぐに着替えて密閉できる袋に入れます。汚れた衣服はそのまま洗濯せず、専門業者に相談しましょう。
3.2 手や顔を洗う
石綿が付着した可能性がある場合は、すぐに手や顔を流水で洗い流します。ただし、衣服を着替える前に体を拭うと、粉じんが舞い上がる可能性があるため注意が必要です。
3.3 現場から速やかに離れる
石綿が飛散している可能性のある場所から速やかに離れ、風下に立たないようにします。
3.4 専門業者に相談する
建築物や工作物に石綿が含まれている可能性がある場合は、無理に作業を続けず、専門の調査会社や行政機関に相談しましょう。
4. 石綿対策のためにできること
4.1 石綿事前調査を実施する
建築物や工作物の解体・改修作業を行う前に、専門業者による「石綿事前調査」を実施しましょう。これにより、石綿の有無を確認し、安全な対策を講じることができます。
4.2 適切な保護具を使用する
石綿が含まれている可能性がある場所で作業を行う場合は、防じんマスク(国家検定合格品)や防護服を着用し、適切な換気設備を使用することが重要です。
4.3 石綿含有建材の適切な処理
石綿含有建材を除去する際は、専門の業者に依頼し、安全基準に則った処理を行う必要があります。石綿は特別管理産業廃棄物に分類されるため、適切な処理が求められます。
4.4 石綿に関する教育を受ける
事業者や作業者は、石綿の危険性や適切な取り扱い方法について学ぶ機会を設けることが重要です。「工作物石綿事前調査者講習」や「石綿作業主任者講習」などの資格を取得することで、安全管理の知識を深めることができます。
5. まとめ
石綿は過去に多くの建築物や工作物に使用されていたため、現在でも注意が必要な物質です。特に、煙突や橋梁、ダム、トンネルなどの施設では、石綿が使われていた可能性が高く、改修や解体時には慎重な対応が求められます。
もし知らずに石綿を触ってしまった場合は、服を着替え、手や顔を洗い、速やかに現場を離れて専門業者に相談することが大切です。
また、事前調査や適切な保護具の使用、正しい知識の習得を通じて、石綿による健康被害を防ぐことができます。今後も安全な作業環境を確保するために、適切な石綿対策を実施していきましょう。